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細菌性髄膜炎

 細菌性髄膜炎は、発熱、機嫌が悪いなどのかぜのような症状から始まり、速やかに進行して、嘔吐、意識障害やけいれんを引き起こし、手足の麻痺や聴力障害などの後遺症を残したり、命を落としたりする重篤な感染症です。鼻や喉の菌がかぜや体力の低下したときなどをきっかけに血液内に侵入し、菌が血液に乗って、脳や脊髄を包む髄膜や髄液に感染することで発症します。

 5歳以下の子どもに細菌性髄膜炎を引き起こす主な菌は、インフルエンザ桿菌b型(ヒブ)と肺炎球菌です。両方とも髄膜炎のほかにも肺炎や敗血症、ヒブでは喉頭蓋炎、関節炎、骨髄炎などの重い感染を起こします。お子さんは 、自分で症状を訴えることがうまくできないため、早期診断、治療が難しい病気です。また近年、抗菌薬の効きにくい耐性菌が増加しており、さらに治療を困難にしています。故に予防が望まれる疾患のひとつです。

 ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンは、アメリカではすでに30年も前から行われており、効果が認められていました。今では、100カ国以上の国々で定期接種として採用されています。わが国の対応は非常に遅く、2013年4月にようやく定期接種に加えられました。この病気でお子さんを亡くされたご両親たちや小児科医が中心となって「ワクチンさえあれば落とさずに済む命」として国に訴え続けた結果です。

 どちらのワクチンも接種した本人の感染を予防するという直接効果のみならず、多くの子どもたちが積極的に接種を行うことで、集団内の菌の伝播がおさえられ、感染症が減るという集団免疫効果があると考えられています。何らかの理由でワクチンを接種できなかった子どもたちも守ってあげることができ、とても意義の高いワクチンです。これらのワクチンの主な副反応は、接種部位の腫れや赤みがみられますが1~2日で引きます。また肺炎球菌ワクチンでは10~20%に高熱が出現しますがやはり1~2日で自然に解熱します。いずれも安全性の高いワクチンです。

 定期接種開始により、ヒブによる髄膜炎を含む重症な感染症は2014年以降1例も見られなくなりました。肺炎球菌によるものも定期接種前に比して57%減少しています。しかし、健康な子どもでも10人に2~3人は鼻や喉の粘膜にこういった菌が存在しており、いつでも発症するリスクがあることを考えると、病気は減少したとはいえしっかり免疫をつけて予防をしておくことは重要とされています。また、肺炎球菌には多くの血清型が存在し、現行のワクチンにカバーされている13種類のタイプの感染症はほぼなくなっているのに対し、カバーされていないタイプによる感染症の割合が増えており、今後の課題となっています。